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フランス北部でスペインを感じる町 アラスの多彩な見どころ

    
冠 ゆき
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アラスの町並み

アラス(Arras)は、フランス北部パ・ド・カレー県の県庁所在地です。古くは中世から羊毛産業で栄え、アラスのタペストリーは、当時、周辺国にも広く知られるものでした。
フランス北部の他の都市同様、アラスもまたその領土が、フランドル伯、ブルゴーニュ公、スペイン・ハプスブルグ家、フランス王の間で長く争われましたが、その名残か、今もグラン・プラスの周辺を歩くと、スペインの息吹を感じずにはいられません。

それもそのはず。このあたりの町並みは、16世紀に、スペイン王フェリペ二世が出した「石または煉瓦造り以外の建物を禁じ」、「隣の建物より前に出ることを禁じる」布告に由るところが大きいのです。

幅が狭く奥に深い建物のファサードが155、きっちりと並ぶグラン・プラスは、他に例を見ない均整を保っており、フランドル式バロックの最も美しい例として挙げられることも珍しくありません。

アラスのグラン・プラス

このグラン・プラスには、毎週土曜朝、マルシェがたちます。その伝統は1000年前から続くものだとか。

このグラン・プラスと小さな通りで結ばれているのが、英雄広場(place des Héros)。グラン・プラスに負けずとも劣らぬ美しさを持つことで知られています。英雄広場には、半ゴシック半ルネサンス式ともいえる市庁舎と鐘楼が建っており、広場に華やかさを添えています。

英雄広場とアラス市庁舎

この鐘楼は、2005年よりUNESCO世界遺産に登録されているものの一つで、エレベータで上れば、アラスの町を一望のもとに見晴らすことができます(3€)。

鐘楼から見た英雄広場(手前)とグラン・プラス(左奥)

もう一つ、この市庁舎にある観光局から足を運べる意外な観光ポイントは、ボヴ(Boves)と呼ばれる地下の世界。もともとアラスの町の地下には、石灰岩が眠っており、それを採取するために、9世紀ごろから掘られたのが最初と言われています。−4メートル、−8メートル、−12メートル地点と、大きく分けて三層に掘られていて、−4メートルと―8メートルの層は、それぞれ町にある家や店の地下倉庫として使われているところが多いそうです。
ボヴと呼ばれているのは、−12メートルの層。意外に広く、迷路のような通路が続きます。

ボヴ地下道

これらの地下道は、第二次世界大戦の爆撃の際には、避難場所としても活用されました。ガイド付きツアー(5.3€)は約40分。


実は、アラスには、他にも大きな地下道があります。こちらは、中心街から少し離れた場所に、第一次世界大戦時、戦闘目的で作られたもので、−20メートルの層に広がっています。こちらも、ガイド付きツアーで見学可能です(6.9€)。


アラスには、鐘楼の他もう一つUNESCO世界遺産に登録されているモニュメントがあります。それは、17世紀に建設された天才ヴォーバン設計による城塞です。こちらは、自由に散策できます。

アラスの城塞ロワイヤル門

最後に忘れてはならないのが、アラス美術館。元聖ヴァースト僧院の建物を利用した美術館で、ルブラン(Lebrun)など17世紀のフランス画家や、ルーベンス(Rubens)などオランダの画家の作品を主に蔵しています。

アラス美術館

今現在行われている特別展覧会は『アラスのヴェルサイユ(Versailles à Arras)』と名付けられたもので、ヴェルサイユの絵画、彫刻、家具などの名品を100点集めた豪華なものです。こちらは、2016年3月20日までの開催を予定しています(7.5€)。

アラスまでは、リール(Lille)からTGVで20分、TERで40分前後(10〜16€)。パリ北駅から約50分(約35€)。

見どころたっぷりなアラス、できれば一泊して、廻りたいところです。

【データ】
アラス観光局(Office du Tourisme à Arras)
住所:Hôtel de Ville, Place des Héros, 62000 Arras
Tel:+33 (0)3 21 51 26 95
URL:http://www.explorearras.com/

アラス鐘楼(Beffroi)
開場時間:1/1〜4/24、9/21〜12/31は、月の10:00〜12:00と14:00〜18:00、火〜土の9:00〜12:00と14:00〜18:00、日の10:00〜12:30と14:30〜18:30。
4/25〜9/20は、月〜土の9:00〜18:30、日の10:00〜13:00と14:30〜18:30。
休み:1/1, 9/5〜6、12/25

ボヴ地下道(Boves)
開場時間:観光局の開いている時間帯
休み:1/1, 1/5〜24、12/25

ウェリントン地下道(Carrière Wellington)
住所:rue Arthur Delétoille, 62000 Arras
開場時間:10:00〜12:30と13:30〜18:00(約1時間のガイドツアーのみ)
休み:1/1,1/5〜30、6/22〜23、12/25

城塞(Citadelle)
住所:Boulevard du Général de Gaulle, 62000 Arras

アラス美術館(Musée des Beaux-Arts d'Arras)
住所:22 rue Paul Doumer, 62000 Arras
開館時間:火水木金の11 :00〜18 :00、土日祝の10 :00〜18 :30
閉館日:火曜日、1/1, 5/1, 11/1, 12/25

(冠ゆき)
(2015/08/26)

  
冠 ゆき

冠 ゆき
山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド、イタリア、中国の生活を経た後、2013年フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40カ国。六ヶ国語を解する能力と多様な文化に身をおいてきた経験を活かし、柔軟かつ相対的視点から、フランスと世界のあれこれを切り取り、webマガジンCafeglobeとっておきのフランスInfoなどで日本に紹介中。

    

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