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政府お墨付き、飲んで美味しく美しさも「鑑賞」したい旧家のマッコリ

    
八田 靖史
八田 靖史
福順都家ソンマッコリを造る朴福順さん。伝統的な製法を踏襲する

そのマッコリに初めて出合ったのはソウルのマッコリバーでした。「地方から運ばれてくる数量限定の商品なんですよ」 と店員さんの語るそのボトルは、細身ですらっと背が高く、他のマッコリと並んでもひときわ目立っていたのを覚えています。銘柄名は「福順都家ソンマッコリ」。冒頭の写真、甕のマッコリをかき混ぜているのが朴福順(パク・ポクスン)さんで、都家(ドガ)というのが酒蔵のこと。ソンは韓国語で「手」を意味し、福順さんの酒蔵で造られている手造りのマッコリという意味です。

左が撹拌前の状態。濁酒なので静かに保管すると内容物が沈殿する

このマッコリに出合ったらまずは「鑑賞」することをおすすめします。透けて見える淡い琥珀色の液体と、底に沈んだ乳白色のコントラスト。これをよく撹拌することで普段馴染みのマッコリになる訳ですが、ここで突如、真面目な表情になって大切な注意事項がひとつ。

「絶対に振ってはいけません!」

いわゆるマッコリの作法とは異なるのですが、この福順都家ソンマッコリに限って言えば、フタを開ける前にボトルを振ると大変なことになります。

フタを開ける前の状態。琥珀色の液体がボトル内で熟成している

というのも、このマッコリは密封されているんですね。通常、酵母が活きた状態で入っている生マッコリは、ボトル詰めされた状態でも発酵が止まっていないため、時間経過とともに炭酸ガスが発生します。それを適度に抜く必要があることから、一般的な生マッコリのボトルには口元にガス抜き用の小さな穴を開けているのが普通です。

フタを開けるとたちまち気泡がぶくぶくと弾けるように浮いてくる

一方、密封された福順都家ソンマッコリの場合は、ガスが内部に充満するものの、小さな穴から雑菌が入る心配がなく、品質は高度に安定しますが、フタを開けるときには細心の注意が必要です。普通にキュッと開けるだけでも、まるでビールかけのように、大量のマッコリが周囲に飛散します。せっかくマッコリを開けたのに、3分の1程度は床に飲ませるという、悲しい事態に陥ることを、飲む人は重々警戒しなければなりません。

下に溜まっていた沈殿物も勢いよく吹き上げられてボトル内を舞う

では、どうすべきか。できるだけ周囲に被害の及ばない場所を選びつつ、フタをキュッと開けたら、即座にギュッと閉める。そしてしばし落ち着かせたら、またキュッと開けて、ギュッと閉める。それを繰り返すことで少しずつガスを追い出し、普通に開けても大丈夫になるまで、何度も繰り返すのが正しい開け方です。手間がかかるように思えるかもしれませんが、これもまた「鑑賞」要素のひとつ。底に溜まった沈殿物が刺激によって舞い上がる様は、シャンパンの泡を眺めるがごとく、美しく格別なものです。

試飲用の器はすぐ近隣に作業場がある「香山窯」で造られたもの

見た目の麗しいマッコリが飲んで美味しくない訳ないですよね。出来たてをそのまま閉じ込めただけあって、フレッシュな飲み口は何よりの特徴ですが、それでいて深い熟成のコクをも含んでいるのが価値あるところ。自然な甘味と、ほのかな酸味、そしてとろっと舌に絡みつく米のうま味。それらがじわーっと波打つように広がって、軽やかに喉をすべり落ちるとともに、華やかな香りの一群がわっと鼻から抜けていくのです。

ハンアリと呼ばれる甕で醸造を行う。大量生産はせずすべて手造り

もともとこのお酒は福順さんが義理のお母さまから受け継いだもの。韓国ではもともと酒造りは主婦の仕事であり、名門の家系においては嫁から嫁へと、その家の酒造りが伝えられてきました。こうしたお酒を韓国では家醸酒(カヤンジュ)と呼びます。

蔚山市の山間部に酒蔵がある。原料の米も蔚山地域でとれたもの

商品化をした歴史は意外に浅く2009年頃から。当初は販路の獲得にも苦労したと言いますが、歴史の裏付けあるマッコリは短期間で評価を集め、いまや政府による公式行事の乾杯酒にも用いられるようにもなっています。

福順都家の新工場。長男のキム・ミンギュさんが設計、建築を担当

規模が大きくなったことで、2015年9月には新工場を設立。農村地域に立つ漆黒の建物はやや異色にも思えますが、これは稲を燃やした灰で外壁を彩ったことから。よく見ると壁の内部にもワラが埋め込まれており、米とともにある酒蔵の精神をよく伝えています。これは建築学を学んだ息子さんの作品でもあるのですが、こうした試みを福順都家では「発酵建築」というキーワードで表現しています。

数学専攻の次男キム・ミングクさんは醸造の科学的な分析を担当

目に見えない発酵という化学変化を、建築物という空間の中に落とし込んで、発酵を中心としたさまざまな文化コンテンツを生み出そうという意図の現れとか。近隣で活動をする陶芸家とのコラボをしたり、酒蔵をモチーフとした映像作品を作って発表したり。従来の酒蔵とはまた違った、現代的な活動を多く試みています。

「伝統の中にも新しさが多く詰まっている」

福順都家ソンマッコリの魅力はそんな部分に集約されていると言えましょう。

<物件データ>
店名:福順都家(복순도가)
住所:蔚山市蔚州郡上北面香山洞キル48(香山里439)
住所:울산시 울주군 상북면 향산동길 48(향산리 439)
Tel:1577-6746
http://www.boksoon.com/

  
八田 靖史

八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。

    

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